「迷い出た一匹の羊を捜し求める羊飼いのように」

園長 秋山 徹

2015年度の新しい歩みが始まります。今年の入園式には桜の花は散ってしまっていますが、シンボル・ツリーの桂の木はすっくと枝を天に伸ばして、その枝々からハートの形をした若い葉っぱがいっせいに萌え出て、新しくはいってくる子どもたちを心を込めて迎えています。上尾富士見幼稚園が始まって51年目の年、新しい体制になっても、わたしたちの幼稚園がキリスト教幼児教育を基盤として、一人ひとりを大切にし、神と人とを愛し、愛される人間教育の基本姿勢は変わりません。最近の幼稚園には3歳児になった時点で年度の途中から入園できる制度になっていますので、もう既に何人かのお子さんは幼稚園生活を何ヶ月か過ごしており、縦割り保育の中ですっかり馴れてみんなに愛され可愛がられて自分の居場所を確保している人もいますが、4月から幼稚園生活が始まる人たちは、子どももご家庭も、はらはら、どきどき、果たして集団生活にうまくとけこめるかと心配しながらの1か月になることと思います。でも、大丈夫、幼稚園でしばらく過ごすうちに、互いに思いやりの心が育ち、豊かな交わりの時を過ごすことができるでしょう。子どもを中心にした保護者の方々の交わりも、親しく厚くなって行きます。一人一人の子どもたちが、どれほどに大きく成長するものであるか、人生の根っことなる愛や信頼や希望が、どれほどに深くその根を伸ばすものか、期待しつつ、今年も、またその営みに励みたいと思います。

毎日のニュースを通して世界と日本のさまざまな事件を通して、どれほど多くの命が無残に失われてゆくかを知らされています。アラブの諸国で毎日のように起こっているテロ。死者の数だけが意味を持つような空しい一人ひとりの死、その背後にどれほど多くの子どもの命が含まれていることか。人を殺したいという衝動に駆られて行動に移してしまった女子高校生。一人の人間の精神異常として片付けられないような、この時代のすべての人間の心に吹き込まれた風のようなもの、悪霊の働きに踊らされているような事件が日本でも相次いでいます。いま子どもたちは、このような時代の空気を吸って育っています。やがてこの子どもたちが敵対心を燃え上がらせ、戦争に駆り出されるような時代が来ることも予感させられます。この時代を生き抜き、死に向って狂奔するような時代の流れに抗して、大きく愛と平和と支え合いの世界に変えてゆく心をもった人材をいかに育てるか、大きな課題が課せられています。イエス・キリストの心、「ある人が羊を百匹持っていて、その一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、迷い出た羊を捜しに行かないだろうか。もしそれを見つけたら、迷わずにいた九十九匹より、その一匹のことを喜ぶだろう。このように、これらの小さな者が一人でも滅びることは、あなたがたの天の父の御心ではない」と語られる、天の父の御心をあらわす幼稚園の庭となるように努めなければなりません。

上尾富士見幼稚園 園だより2015年4月号より